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1か月前。
初夏の陽射しで、ほんのり肌が汗ばむ日曜日。
昼過ぎから俺の部屋に来ていた香子は特に用も無いらしく、部屋にあった教育関係の本を淡々と捲っていた。
「はい、どうぞ」
俺は香子の前に麦茶のグラスを置いて、彼女の後ろに座った。
「何で、そんなとこ座るのよ?」
「どこに座ろうと俺の勝手だろ?」
俺は知っている。
香子は口では拒否しながら、こうやってくっついているのが好きだってこと。
現に香子はそれ以上は拒んでこない。
「それ、面白い?」
香子の肩越しに本を覗いてみると、彼女の髪からはいつもの香りがした。
「亨、読んだんじゃないの?」
「それ、先輩の教師から薦められたんだけど、全く読む気しなくてほったらかし」
「どうせ借りた時点で興味なかったんでしょ?」
「よく、お分かりで」
俺は手に持っていたグラスをテーブルに置いて、冷えた指先で香子の頬を撫でた。
何も言わずに身を捩って拒むふりをする彼女を逃がす気なんてさらさら無かった。
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