願うは、キミの幸せ

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「ねぇ?」 「ん?」 いつも終わった後は俺に背を向ける香子。 その時だけは俺も無理やり彼女の顔を覗き込んだりしない。 せっかくの余韻を壊したくないから。 それなのに香子の方から、繋がる空気を消してきた。 「私、しばらく亨に会わないから」 「は?」 そのまま黙り込む香子の真意が見えなくて、今日ばかりは彼女の顔を見ようと背中から覗き込んだ。 「どういうこと?」 「そのままの意味だけど」 「“会えない”じゃなくて“会わない”って何?」 「べつに、それはどっちでもいい」 「ちゃんと分かるように言えよ」 いくら待っても香子からの返事は無い。 こいつの突飛な行動は今に始まったことじゃない。 隣にいたと思ったら、急に逃げ出したりすることは何度もあった。 その度に追いかけて、ちょっと優しい言葉をかけるとシュンと肩の力を抜いてホッとしたように甘えてくる。 それは香子なりの何かしらのサインなんだと思って今日まで来た。 だけど、今は目の前にいる香子の心が全く分からなかった。
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