願うは、キミの幸せ

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「しばらくってどれくらい?」 騒ぐ胸を抑え、努めて冷静を装った。 「分かんない」 「……何か、あったのか?」 「仕事が忙しいだけ」 「だけって……」 こいつの実家は曾祖父の代から続く地元住民に愛される開業医。 香子はそこで皆から頼りにされる医者として働いている。 救急を担う中核病院の医者でもない彼女が急に生活リズムを変えないといけないほど忙しくなるとは思えなかった。 「何かあったんだろ?」 「だから、忙しいだけだってばっ」 香子は布団を奪い取ると頭まですっぽり被って、それ以上の追求を許してはくれなかった。 元々、俺たちはそんな頻繁に会う方ではない。 子供の頃から一緒で、つい最近付き合い始めたようなカップルでもない。 だから、本当にお互いのタイミングが合う時に会えればそれで良かった。 ただ、それさえも絶たれると急に不安になる。
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