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「ただいま。」
誰もいない部屋にこだまする声。
帰りを待つ者がいないが
これがこの部屋の主、黒田の日々の日課だった。
親から貰った名前はない。
捨てたのではなく、ないのだ。
この黒田という名も随分と昔に
そう呼ばれていたというだけのもの。
自分を表すのに使い勝手が良いというのが今も使い続ける理由である。
事実、黒田という名は良くも悪くも有名であった。
この街では知らぬものはいないほどには、だが。
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