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二十五歳で、ガラス職人の彼は私に負けず劣らぬガラスおたくだった。
話題は常にガラスのことばかりで、デートもガラス関係の場所ばかり。
友達には「楽しいの?」なんて引きつる笑顔で何度も聞かれたものの、私には彼と過ごす時間が堪らなく幸せで居心地がよいものだった。
彼と知り合って間もないのに、昔からずっと一緒にいたような錯覚にさせられて、気付けば好きになっていた。
「好き......」
七度目のデートで一言彼に伝えると、彼はトンボ玉のように目を丸くさせ、そしてすぐに壊れてしまう繊細なガラスに触れるように、そっと抱き締めてくれた。
「一生大切にするから......」
耳元で囁かれた愛の言葉に、なぜか涙が溢れてしまったのを、今でもよく覚えている。
『好き』って感情は瞬く間に膨れ上がっていき、その膨らみは限界を知らなかった。
優しくて、笑うと目尻にシワができる。
嘘をつくと、耳がピクピク動いちゃって、すぐに冗談を信じちゃうような真っ直ぐな人。
仕事をしている時の彼の姿は、惚れ直してしまうほど素敵で、暑さで何度も汗を拭う姿にはキュンとさせられる。
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