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「はーい」
女が縁側の雪見障子から顔を出した。
「…まぁ」
崇文の顔を認めたのか、女は急いで沓脱のサンダルを突っかけると飛石を来て格子戸を開けた。
「先日は傘をありがとうございました」
崇文は恐縮するように小声で礼を言った。
「まぁ、こんなええ天気に、傘なんか持ちなはって、気が退けましたやろ?」
「ぇぇ。少し」
「ふふふ…わざわざ、おいでやしたんや、オブでも飲んでっておくれやす」
「ぁ、はぁ」
断る理由のなかった崇文は、女の招きに甘んじた。
女の名を辻堂祐理子。書道を教える未亡人だった。
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