七変化

6/19
前へ
/19ページ
次へ
「東京のお人やったら、味付けは濃いのんどすやろ」 そう言って顔を向けた祐理子から目を反らすと、自慢だと言う銀鱈の煮付けに箸を付けた。 「…ん、美味しい」 「ほんまに?良かったわ」 崇文は銚子を手にすると、羞じらうように俯く祐理子の前に在る猪口に近付けた。 「まぁ、おおきに」 祐理子の細い指先に添えられた猪口の縁が、薄く紅を塗られた唇に触れていた。 飲むと頬を染める祐理子を知っていた崇文は、淡紅色に変わるその瞬間を見届けたかったのだ。 祐理子を眺めながら、崇文は頭の中で好きな俳句を詠んでいた。      し    淡 も  愛 き つ  し 紅 け  ひ 注 の  と す
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加