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「東京のお人やったら、味付けは濃いのんどすやろ」
そう言って顔を向けた祐理子から目を反らすと、自慢だと言う銀鱈の煮付けに箸を付けた。
「…ん、美味しい」
「ほんまに?良かったわ」
崇文は銚子を手にすると、羞じらうように俯く祐理子の前に在る猪口に近付けた。
「まぁ、おおきに」
祐理子の細い指先に添えられた猪口の縁が、薄く紅を塗られた唇に触れていた。
飲むと頬を染める祐理子を知っていた崇文は、淡紅色に変わるその瞬間を見届けたかったのだ。
祐理子を眺めながら、崇文は頭の中で好きな俳句を詠んでいた。
し
淡 も
愛 き つ
し 紅 け
ひ 注 の
と す
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