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夕方。
廊下に差し込む赤い日差しが眩しかった。
美沙は乱れたブラウスのボタンを留め直しながら、図書室から教室までの廊下を歩いていた。
サッカー部の彼には少し期待外れだった。
思ったよりもウブで、素人くさくて、たぶんドーテー。
腰の振り方もなってなくて、控えめに言っても下手くそ。
遊んでる身なりのくせに。
でも、学校の図書室というロケーションは良かった。
普段は人がいないから、安心はできたけど、それなりのスリルがあった。一応、司書さんは常駐しているし。
ある程度の興奮はできた。
美沙は、そんな考え事をしながら教室に戻ると、自分の机から鞄を掴んで、帰ろうと振り向いた。
すると、そこに銅像のように動かずに、じっと本を見つめている少年が座っていた。
その時に自分がとった行動を、美沙は顧みても、不思議だし意味不明だったのだけど。
彼の目の前に行って、文庫本から動かないその視線を試したかったのかもしれない。
教室に戻った自分を、まるで無視するように読書する彼を、きっと美沙は試したかったのだ。
彼女はそのまま少年の前まで移動して、スカートをめくってみせた。
すると少年はブリキみたいな音をたてて首を動かし、ようやくその瞳に美沙のことを映した。
美沙はその動きに対して単純に感動したし、自分が少年にパンツを晒していることを一瞬でも忘れていた。
一方で少年は、ただひとこと。
「痴女」と呟いて、読書に戻った。
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