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「亨って損な性格よね」
叩かれた頭を擦る手が止まった。
「どこが?」
「アレよ」
香子が見据える先では忍の口元に付いたクリームを指で拭う壱琉の姿。
しかも、壱琉はそれを舐めやがった……
その仕草に男子までもが唾を飲んで喉を鳴らした。
「みんなが楽しんでくれたら、それでいいんでしょ?」
ん?と首を傾げたら香子は笑いを吐いた。
「いつも面倒な役を引き受けてるんだから今日くらい主役でいればいいのに」
「あぁ、そういうこと……」
香子の言いたいことは分かった。
でも俺は……
「こっちの方が性に合ってるから」
「分かってるけど……」
「けど?」
香子は次の言葉を探すように賑やかな先を見つめている。
その静と動の狭間で俺は珍しく素直になれる気がした。
「俺は、あいつらに必要とされたいんだよ。
俺がいなきゃダメだって思われたいの」
「そんなの、とっくに思ってんじゃないの?」
「だろうな。でも、それ以上に俺があいつらを必要としてる」
「ふーん」と素っ気ない態度は妬きもちの証。
「お前が一番必要だ」なんて言わないでおこうか。
今は……な。
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