●ツンデレ姉さんにはご用心●

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仕事に一区切りをつけてリビングに向かうと、キッチンから陽気な鼻歌が聞こえてきた。 足下に擦り寄ってきたクロを抱き上げてキッチンへと向かう。 クロを始め、我が家に住み着いていたネコたちの首にはいつしかパステルカラーの首輪がつけられていた。 『迷子にならないように』 そう言って紫が買ってきた首輪には小さな鈴がついていた。 「えらい、ご機嫌だな」 「わっ」 紫の背後から声をかけると不格好に切れたジャガイモ。 「もう、壱琉さんっ。びっくりするじゃないですかっ」 包丁を片手に振り向いた紫。 鋭く尖った刃先が妖しく煌めいた。 「何作ってんの?」 「ちょっ、壱琉さんっ。狭いっ」 自分の体を強引に押しつけるように覗き込んで、紫をシンクとの間に閉じ込めた。 「今日の晩飯?」 「そ、そうですっ。今日はお客さんがいっぱい見えるんですからっ……て、ほんと狭いですって」 「危ないから包丁、置け」 「そんなっ。壱琉さんが離れてくれたらいいだけじゃないですかっ」 「ほぉー」 こいつもなかなか言うようになったな。 躾のしがいがあるってもんだ。
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