これから始まる物語

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「あの……そろそろ乾杯の方に……」 司会者が恐る恐る声を掛けてきた。 「あっ、すいませんっ」 感傷に浸ってる場合じゃなかった。 「ほらほら、そろそろ席戻れー。乾杯するぞ」 えーっ、の大合唱が耳をつんざいた。 「さっきの鎖骨にセリフも付けてやるから」 「セリフっ!?」 「あぁ。だから言わせたいセリフ考えとけよ」 「ラジャッ」 きっとコイツら、披露宴が終わるまで俺らそっちのけでセリフ考えてんだろうな。 ブツブツ呟いたり、笑いを吹き出しながら席に戻っていく後ろ姿に呆れるしかなかった。 意図した以上に盛り上がった演出から、打って変わって静かな時間。 改めて見渡すと照れくさい。 あいつらの笑顔が嬉しい。 隣には香子がいる。 やっぱ俺、幸せだ。 「本日は私達の為にお越し頂きまして、誠にありがとうございます。 限られた時間ではございますが楽しいひと時をお過ごしください。 また本日は形式にとらわれないアットホームなパーティにしたく、恐縮ではございますが私達2人で乾杯の音頭をとらせて頂きたいと思います。 皆様ご唱和ください。乾杯っ」 この気持ちはきっと一生もんだな。
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