調査・初日。

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利休が聞いた話では、異変は半月前から。雨が降る夜更けに、誰かが歩く音が聞こえるのだと彼の人物は話していた。 ぱしゃんと水を踏む音が響いて目を覚ます。 皆が寝静まった夜道を誰かが歩いている。一歩ずつ着実に進むのが解る確かな足音…雨音に混じる音は妙に明瞭で耳に残ってしまう。 釣られて覚醒する頭は、眠気に恐怖心を奪われがちだ。そして上回るものは『好奇心』。彼の人も同じく次第にその正体を知りたいと考え、布団を抜け出して雨戸の隙間から覗き込んだ。 「それで見たのは、歩く音に合わせて跳ね上がる水…何かが歩いていた足跡だった、と」 古田が説明した場所までをなぞり終えると瀬田は一度唇を結ぶ。 話自体は簡単なもので、纏めてしまえば説明も直ぐに済んでしまう。間違いが無いと頷く古田に、包みの中身を食べ終えた牧村が首を傾げた。 「何処にでもある話ですよね」 慣れとは怖いもので、非日常の領域が随分と狭くなっている。此れは自分のせいではないと頭を抱える古田だったが、今は話を進めることが先だ。
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