第1章「デメコとムクロ」

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「ああ……」  苦痛に顔を歪ませたデメコだったが、青ざめた顔はしだいにもとの色を取り戻す。痛みが薄れていくのを「よかった」と感じてしまうデメコがいた。  ――よくなんか、ないのに。  見れば、足は元通りの形をしていた。  きれいで真っ白な――傷ひとつない足。  今日もまた、デメコは自分の体に傷を残すことができなかった。  永遠のこの体は、今日もまだ少女のままだ。 「私は、死ねないんだね」  そのつぶやきに、ムクロは何も答えなかった。 「知ってる?」とデメコ。 「人ってもともと死ぬようにできているんだって。テロメア、とかいうものが体にはあって、砂時計みたいに人が死ぬのをカウントダウンしているの。ホントは死ななくてもいいのに、老いて、死ぬようにプログラミングされているんだ」  ムクロはやはり答えない。 「死なないと、人は全滅しちゃうから。環境に適応した個体を作るために、何度も何度も死ぬの。そういうためのプログラムなの」  ――ねえ。  何も答えないムクロに、デメコは聞いた。 「じゃあ、なんでみんな死んじゃったのかな」  
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