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NO1
鏡の国の美少女
-白根美奈子は2階の自分の部屋で、熱心に丸いスパンコールを縫い付けていた。
ネット通販で買ったフレア袖のついた白いブラウスにまばらな間隔できらきらとピンクに光るスパンコールを縫い付けていく・・・
傍らにはすでにスパンコールが縫い付けられたクロスラップのショートパンツが無造作になげだされている。
白い上下にスパンコールで統一感をだすのだ。
明日は原宿に出ようと思っていた。
原宿は美奈子にとってのファッションショーの舞台だ、みんなに見せて歩く…そのことが楽しい。
小さいころからお絵かきでいろんな服を着た絵を描くのが好きだった。
将来はデザイナーになるのもいいな、と考えたりする。
「デザイナーになれるかな」 スパンコールを縫いつけながら美奈子はつぶやいた。
暗い住宅街の道を男が歩いていた。
黒っぽい服装のその男の体から欲望のエネルギーが噴出している。
男はこの1週間ほど目をつけていた獲物の居る場所に向かっていた。あとをつけ下見をして獲物がいる部屋まで特定していた。
頭の中で何度も実行して やる 手順ははっきりしている。
手にさげた袋の中にはそのときのための手足をしばる紐や口をふさぐテープがはいっている、脅すためのナイフはポケットにつっこんであった。準備はすべてととのっていた、
「後は計画通りにこの体を動かすだけだ」
欲望がはっきりとした的に向かって男の体を突き動かしていた。
獲物を想像すると尻から頭に向けて何か固まりのようなものが押し上がるのを感じた。
男は口を少し開くと舌先を出してくちびるをなめた。
美奈子が座っている斜め横にたて長の姿見がある。
その鏡が答えた。
「なれるさ、センスがいいからね」
美奈子は微笑んだ。
美奈子がこの鏡を買ったのは3年ほど前、全身が映る鏡がほしかったからだ。
新品だと高いけれど、世田谷通りにあるリサイクルショップでみつけたその鏡は台座に傷があるせいか割と安く出ていたのだ。
だから迷わず買った。
買ってしばらくたったころから美奈子は鏡と会話するようになった。
もちろん本当に話すのではなく、鏡に向かっているときに自分で質問して自分で答えているのだが・・・
変な話だけどそんな風に30分でも1時間でも鏡と「話しこんで」 しまうのだ。
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