私を、ゆるしてください〈第四話〉

第四話【母】

――クスッ

と山下さんが声を漏らした。

何？

「こういうことに関してだけは、中澤さんの鉄壁笑顔も崩れるよね」

自分では完璧に隠し通せたと思っていたので、彼の観察眼に驚いた。

「複雑そう。俺とのデート、そんなに嫌？」

"デート"という単語に、むず痒い思いを抱いた。

「そんなことは…」

ないです、と言おうとして、迷った。

嫌なわけではないが、乗り気なわけでもない。

こういった時に、

“楽しみにしてます”

と言うのは、社交辞令だと捉えてもらえるのだろうか。