もっと囁いて

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緊張した啓の表情…。 まっすぐに見つめられない俺の目線は啓の喉元に…。 僅かに上下した喉仏。 この先の展開が読めるようで読めない焦れったさに唇を噛む。 頬に触れた手をおろして啓の背中にまわした俺の手を握ると胸の辺りで掌を上に向けた。 形のいい爪の指先が文字を綴る。 「ト…ラ…ウ…マを…き…い…て」 俺ははっと啓を見つめた。 緊張しているその瞳は決意に力強く、苦しそうに揺らいでいる。 そんな顔で、そんな表情をしてまで俺に伝えたいのか…。 じっと俺を見つめる瞳。 こくっと頷いた。 はぁー…っと緊張をとくように啓は息を吐いて、テーブルの方を指差し〈座ってきいて〉というジェスチャーをする。 俺は啓の手を握り、ベッドのサイドフレームに背持たれるように並んで座った。 手を繋いだままの啓の手を横目で見つめ、つうっと横顔に視線を動かした。 座る時にポケットからスマートフォンを取り出し握ったまま考え込んでいる。 (伝えたくないのなら…話さなくいい) そこまでして。 そんな思い詰めるほどなら聞きたくない。
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