もっと囁いて

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ここは大きな公園で、アスレチックや芝生の広場、回りを囲む木々が森のように生い茂り、人工の川が流れ、築山がそれを望めるように盛られている。 俺はその築山に登り、ある一角に目を向けた。 公園を囲む木々に巻き付いた幾枝の野藤がたわわに房をつけ見事に咲いているのを、月明かりと数少ない外灯の灯りでぼんやりと浮き上がらせていた。 そんなぼやけた野藤を見て、その向こうにある思い出を見つめた 『ふじりんごさん、風景写真が好きなんですね。今度は何を撮る予定ですか?』 『りっちゃんさん♪いつも投稿写真を見てくれてありがとう(^_^) 今の時季は藤がキレイに咲いています♪ 私の近所に大きな野藤があるんですよ~(*´∇`*)なのでそれにしようかな?』 両親にも友達にも自分がゲイだとカミングアウト出来ないでいた。 だがそれでも唯一、無料コミュニティー投稿サイトで俺はゲイとして自由でいられた。 サイトのサークルでLGBT同士が集う〔アスナロ会〕に参加して他愛もない会話をしたりパートナーの自慢をして情報を交換していた。 その中でもふじりんごとは一番気があった。
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