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二人は顔を見合わせ、
「向こうの林にあり…。」
彼女が指を指した方角を見て、俺は案内の途中で立ち上がると走り出していた。
時間がない!
指した方角は築山の向こう。
俺は真っ直ぐ公園を突っ切りたかったが築山を登るのは嫌で遊歩道にそって走った。
築山に隠れていた木々が見えてきた。
「うわ…」
駆ける足を速め、ある程度の距離で立ち止まった。
林のように立ち並ぶ木々に蔦を巻き、新緑の葉に小振りな泡紫の花房が寄り添うように咲いていた。
俺が記憶している藤とは違った。
上品な藤棚とは違う。
野性的で刹那の力強さを感じながらも官能な色香がある。
一瞬見惚れてしまい、はっと我に返りスマートフォのディスプレイを見た。
後2分…。
スマートフォンをカメラ機能に設定にしてかざした。
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