もっと囁いて

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だがアングルが気に入らなくてスマートをかざしながら後退りで、数歩下がったところで人にぶつかった。 「あっわりぃー。」と、条件反射で詫びを入れそのまま相手の顔を見ずに約束の時間にシャッターを押した。 カシャッ!! 同じタイミングで後ろからもシャッター音が聞こえた。 その時なんとなく振り返った。 それがたまたまなのか、何かの予感だったのか…。 振り返った先に立つ青年は予知していたのかこちらの方を見て笑みを浮かべていた。 少し前髪の長いハニーブラウンの髪は藤の風に遊ばせたまま…。 「もしかしてふじりんごさん?」 思わず口にした言葉に顔を赤くし、俯く俺に目の前の青年はそっとスマートフォンの液晶画面を覗かせた。 〈もしかして…りっちゃんさん(*ノ▽ノ)?〉 ――――……あの時振り返らなければ。 あの瞬間声をかけなければ。啓…。 お前に出逢えなかったんだ…。
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