もっと囁いて

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ヒリヒリと喉や胸が痛くなる。 [ 少し考えさせて……] 啓、啓…お願いだ。 どんな言葉でもいい。 メールを返してくれ。 ヒリヒリとする喉元を手で押さえ、今にでも叫びだしてしまいそうな感情を押さえた。 アパートに戻り、ベッドに倒れ込んで職場で押さえていた感情を爆発させた。 「ああああ゛あ゛ぁーーーーー!!」 ひとしきり叫んでスマートフォンをズボンポケットから取り出した。 今になって啓の自宅、勤め先を知らないことに気づく。 実家暮らしだと聞いただけで何で住所を聞かなかったのだろう。 仕事は事務職だと聞いただけで何で会社名を聞かなかったのだろう…。 何であの時、声を出せなんて言ったのだろう…。 何であの時歩み寄ろうとしてくれたのに逃げ出してしまったのだろう…。 なんであの時部屋を出てしまったのだろう…。
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