もっと囁いて

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重ねた手に視線を落とした。 俺を許してくれさえすればそれでいいと…。 そう思ったそのとき。 重ねた啓の手がスルッと俺の手から抜けた。 その手はスマートフォンの液晶を滑べらせ、時々手を止めては考えるように顔をあげ、また指を滑らせる。 どんな内容を作っているのか気になったが出来上がるまで見ないように、目の前に置かれた電源の点いていないテレビ画面をぼんやりと見つめる。 その暗いテレビ画面にスマートフォンを弄る啓と余裕のない顔の自分が写っている。 シュール過ぎる…。 さっきまで啓の手を握っていた手はむなしくカーペットの上に置かれたまま…。 チラッと横目で啓を盗み見た。 (まだ出来ないのか) 小さく、細く息を吐いた。 どんなことが打ち明けられるのか軽く緊張する。 その時、くいっとシャツの袖を引っ張られた。 はっと振り向き啓と目が合った。 しかし伏し目がちに目をそらされチクッと胸が痛んだ。 差し出されたスマートフォンが僅かだが震えている。 「啓…」 そらされた目が戸惑いがちに向けられた。
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