もっと囁いて

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俺の左肩に頭を乗せ、幸せ一杯だというように甘く艶めいた吐息を吐いた啓に右手で頭を撫でると嬉しそうに目を細めた。 そして撫でている俺の手を取ると掌に自分の人差し指を滑らせた。 〈よかった?〉 そう書いて俺を見上げた。 俺も啓の掌に、 〈もっとしたい〉 そう書くと啓は腹に平手打ちをした。 だが啓は叩いたその手を俺の体に巻き付け体をおこし、片足を跨がらせ馬乗りになると、眉を寄せ顔の前に右手をつまむように動かし手を縦にして振り下ろした。 「ごめん? なんで謝んだよ」 冗談だと指を広げた両手を前に向け2回振った。 そこでやっと啓はホッとした表情に戻った。 〈でも言ってね〉 また掌に言葉を書く。 不満があれば言ってくれという意味だろう。 だが本当に言ってもいいのか?
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