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ずっと我慢していた。
単純で、でも言いづらい…。
自分の掌を見つめ、悩んでしまった。
それがいけなかった。
何かあると分かった啓は何度も教えるよう催促してきた。
行為に不満があるなんて言えない…。
〈言わないとわからない〉
眉を寄せ、必死な表情を作る。
〈噛むのをやめろ〉
啓の右掌に指をなぞり、歯形の残った左手の母指球(親指の付け根にある肉厚の箇所)を親指のはらで撫でた。
「アザになってるじゃないか…。」
いつもそうだ…。
苦し気に顔をしかめ声を押し殺すように自分の手を噛む。
見ていてこっちまでもが苦しい…。
啓はふるふると首を振って無理だと示した。
「噛まないで喘げばいいだろ?」
簡単な手話ぐらいしか習得していない俺は口で攻める。
でも啓は何を察したのか、〈ごめん〉と手話をした。
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