落としたメモ

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「でも何にも用意が…」 「もうここに君の署名をするだけでいいように記入済みだよ」 用紙には必要な名前が記入されてハンコまで押してある。 あとはミリの署名欄だけで、ご丁寧に印鑑も押されていた。 「タケルのご両親は大丈夫なの?」 「大丈夫。ここに署名されているだろ?」 保証人欄にはタケルの両親の名前がある。 「明日市役所へ行って、君の戸籍謄本をもらったらそのまま届け出よう」 両親が動かしていなかったから、ミリの戸籍謄本はこの地にあった。 「タケル! 嬉しい!」 ミリは自分の為に両親を説得し、準備してくれたことが嬉しくてタケルに抱きついた。 これでタケルと家族になれる。もう天涯孤独じゃない。 ミリの目から涙が零れた。 その夜はいつもより激しく幸せな時間を二人で過ごした。 疲れて寝ていると、ミリの夢に両親が現れた。 ミリは二重に嬉しくて、「お父さん、お母さん、私、タケルさんと結婚するの」と喜んで報告した。 喜んでくれると信じていたのに、二人ともとても悲しい顔をした。 「お父さん、お母さん、喜んでくれないの?」 ミリは祝福されていない気がして悲しかった。 両親は最後まで微笑むことなく消えた。
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