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翌日はタケルがレンタカーを運転し、近くの市役所へ二人で向かった。
戸籍謄本を貰い、そのまま婚姻届を提出するとタケルはミリを抱きしめた。
「これで晴れて夫婦になれた。このまま新婚旅行にしよう」
「うん!」
一緒に有名な岬までドライブ。
タケルはミリを崖の先端へ連れて行った。
「この岬は有名な景勝地だよ」
「見晴らしがいいわ」
崖の先からは大きな海が一望できる。
曇り空に遠雷が聴こえた。
「もうすぐ雨が降りそうね」
「そうだね。でももう少しここにいよう」
「私は車に戻るわ」
立ち去ろうとしたミリの手をタケルは掴んだ。
「もう少し、いなよ」
「そう?」
ミリは立ち止った。
やがて風が強くなり天気が崩れてきたので周囲から観光客がいなくなった。
その時を見計らったかのように、タケルはミリの手を強く引っ張って海の方に体を押した。
「キャッ! タケル! 危ないから止めて!」
崖から落ちそうになったミリはタケルにしがみついた。
ふざけているのだろうと考えた。
タケルは重く低い声で脅すように言った。
「黙ってここから落ちろ」
「どういうこと?」
ミリは悪い冗談だと思おうとした。
タケルは押す事をやめない。
「タケル! 本当に悪ふざけは止めて!」
二人でもみ合った。
タケルは本気だと分かった時、恐怖で全身に鳥肌が立ち、思わず叫んだ。
「誰か助けて!」
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