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その時ミリは遠くからネクタイを翻し、爆走してくる蓮沼の姿を見つけた。
アメフトで鍛えたという体は全身に力が漲っている。
『は、蓮沼刑事!? なぜここに!?』
蓮沼はあっという間に二人の元へ来ると、正確にタケルの顔へパンチを一発お見舞いした。
「グワッ」
タケルは衝撃でひるんだ。
その隙に蓮沼は素早くミリをタケルから引き離し、崖から遠ざけた。
「私の後ろにいてください!」
そう叫ぶと今度はタケルの体にタックル。
地面に倒れたタケルの頭と体を蓮沼は渾身の力で抑えこんだ。
タケルはもう抵抗できない。
ミリは蓮沼の行動に驚いて訊いた。
「どうしてあなたがここにいるんですか?」
「実はこれを拾いまして」
蓮沼はあのメモをポケットから出した。
「私のメモ!」
「これのお陰でお二人を尾行できました」
タケルは息巻いた。
「クソッ! このストーカー野郎! お前の目的はミリだろ! ミリを見張っていたんだろ! 市民への暴力で訴えてやる!」
蓮沼は澄まし顔で言った。
「どうぞご自由に。その前に殺人未遂で起訴してやるから。そして殺人罪でもね」
ミリはそのセリフにも驚いた。
「殺人罪って、どういうことですか?」
蓮沼は気の毒そうな顔でミリに告げた。
「気をしっかり持って聞いてください。この男があなたの両親を殺した犯人です」
「エッ」
ミリは息を飲んだ。
タケルは叫んだ。
「ミリ! こんなお前を付け狙う男の言葉など信じるな! おい! 俺がやったという証拠はあるのか!?」
「俺が見張っていたのはお前だ。証拠はある。それは警察でじっくり見せてやる」
遠くからパトカーのサイレンが聴こえてきた。
「とりあえず、あれに乗ろうか?」
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