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動いているからこそ時は待ってはくれないし、こちらの言葉を待つ少女に失礼をしている事になる。
僕が考え出したその時にはさぞ不思議そうな顔を浮かべていた事だろう。そして、今、話を聞かないことに苛立っている。そうに違いない。
「すみません。ちょっとしたお色気シーン、入れないほうが良かったなという結論に辿り着くまでに色々と考えておりました。あのシーン、やっぱりない方が面白かったですかね?」
「……まさか……作者さんですか?」
と、本日二度目の『しまった!』を心の中で叫ぶのだった。
……いや、まだ完全にばれた訳じゃない。ここで嘘だと貫き通せば……。
「はい、僕が作者です」
僕の性格上そんな事言えるわけはなかった。
作者でいる事がこんなにも誇らしいのだ。偽る理由がない。
「本当ですか?! じゃじゃあここのアイクがセツナを殴って抱きしめるシーン。これは何でなんでしょうか? 文章で書かれていなかったんで良く分からなく」
僕は物語を思い返しながら一咳を入れると、
「あーここね。互いにヒロインの事を想うアイクとセツナの心の葛藤を抱きしめながら表現するという作者の僕が凝ったシーン一つなんだけど」
凝ると同時に編集さんに酷く修正点を食らった一つでもある。
僕は一息入れて言葉を続ける。
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