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五年前、練りに練ったプロットを持って出版社に持ち寄ったあの日、心優しい編集者さんと出会い、長い年月をかけてたった一つの小説を書き上げてきた。
それも僕の処女作が本となった今では懐かしき思い出に過ぎない。
先日、ようやく後書きを書き終えたと思えば、あっという間に書籍化。長い年月かけた分、それは一瞬の出来事に思えた。
編集者さん曰く、早めにやっておかないと後でずるずる先延ばしになってしまうとの事で……とどのつまり他の小説家に書籍化の枠を取られる前に書籍化してしまえというものであったわけだが。
何より、処女作が本となって近くの書店に並ぶのは嬉しい事だ。
出版社や通販のサイトに『黒髪の侵略者』と検索をかければ一冊の本が結果に表示されて、ちょっとした有名人にもなった気分である。
しかし、本が売れるかどうかはまた別問題だ。
今、僕は世の中の小説家と同じ舞台に立っただけなのだ。ここから上がれるか、それともここから堕落していくか……。
正直言って僕の小説は例えようもないぐらい完璧に仕上がっており、手に取って読んでくれさえすれば必ずと言ってしまっていい程、面白いと口に出してくれるだろう。しかし、それを決めるのは読者。読む人によっても好き嫌いはあるし、なによりあらすじを読んで購入してちゃんと読んでくれるかどうかそこが一番重要である。
気になる。非常に気になる。
編集者さんの話では今日から書店に並ぶらしい。
作業机に飾った製本を見つめ、落ち着かず、貧乏ゆすりをしていると、ふと良い案が浮かんだ。
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