読者第一号

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「よし、様子を見に行こう」   このままじっとしていても埒が明かないと思った僕は早速行動へと移した。   なぁに、簡単な事だ。読者が読んで面白いと言ってくれるか確かめる為に僕が直接書店へと出向き、様子を伺えばいいのだ。読んだその場で感想を聞く。これがベストだ。   ルンルン気分で古アパートを出た僕は、階段で転びながらもどうにか近くの書店までたどり着いた。   ただ書店に行くだけなのに体中がもうボロボロである。   普段、古アパートの一室を借りて、小説を書き続けている僕には書店に行くだけでも険しい道のりである。引きこもり、そう言われると悲しくなってくるが正しくそれである。 未だに親の仕送りのみで生きているが、小説が売れさえすればこの生活ともおさらばだ。しかし、そう人生は甘くない。 処女作でバカ売れする小説家は僕の経験上ゼロに等しい。売れるのはごく一部の天才ぐらいなものだ。 僕がその天才であるかどうかは一ヶ月先の売り上げ結果を見ない事には語れまい。高望みはよしておこう。 ややあってようやく書店の中に入った僕は早速、出入り口前に置かれた新作本コーナーに目をやった。 他社の新作本がいくつも束になって重ねて置かれているのが目に入る。 中には有名作家の五年ぶりの新作も見受けられる。
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