読者第一号

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こういう時に何を話せば良いのかまるで思いつかない僕は黒髪の侵略者の内容を思い返しながら、彼女が読み終わるのを待って、 「……その小説、ページ六十から七十にかけての主人公のアイクが侵略作戦を考える所が面白いと思います」   今身近にある共通の話題の提示。こう言えば感想が聞きやすい考えた結果である。無視されればそれまでだが。 「……? あっ、そうですね。でも私はラストシーンの仲間を裏切るアイクの心の葛藤が一番面白かったです」   思っていた以上に食い付きが良いと思いつつ言葉を紡ぐ。 「良く読んでいらっしゃいますね。宜しければ少し感想でも聞かせてもらえないでしょうか?」   僕の小説の中に出てくる脇役のフィリスは礼儀正しく、勇敢な戦士である。だから今の僕はフィリスだ。フィリスになったんだ、という心持で彼女と対話を始めた。 「今一度読んだだけなので感想をと言われましても……そうですね……感想とは違いますが、私的にここはこうしたほうが良かったなというシーンがありまして」   僕の目の前に提示されたページにはちょっとしたお色気シーンのもようが書かれていた。   プロットの段階には書かれていなかった唯一編集さんの指示で仕方なく追加したシーンである。 「えっと、ですね。このシーン、凄く作者に無理が出ているように感じるんです」 「無理!?」
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