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「いや、しかし……私は今のニュースを信じる事が出来ません。あのエアが人を傷つけるなどと……エアには人を傷つけられるように設計したつもりはありません。だから」
「これは社の沽券に関わる事だ。異論は認めない。いいな、分かったら直ぐに成果を見せてくれ。期待している私をがっかりさせないでくれたまえよ。頼んだぞ」
一方的に用件を告げ、通信を切った社長。もうこちらから電話しても社長は出る事はないだろう。
やがて社長はTVの画面に記者会見の映像として映し出されていた。
それは酷く疲れたような表情をしている。何時間も寝ずに電話の対応をしたかのように。
これが社長のやり方だ。同情を買おうとしているのだ。目の下の隈はメイクに違いない、と賢は考える。すると。
バタンッ!
TVに見入っていた賢の元に勢いよくドアを開け、慌てて入ってきたのは一人の女性、明日香だ。
「鈴沼部長、大変ですよ! エアが! エアが!」
呼吸を整える。一体どれほどの距離を走ったというのだろうか。この研究所、走って息切れする程、広い建物ではない筈なのに。
「あぁ、分かってるから一旦落ち着きたまえ」
賢は体力ないなと思いつつ、焦る明日香とは対照に冷静であった。
「しかし!」
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