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「はい、マスター。今の私は起動出来た喜びに満ち溢れています」
その答えとは裏腹に彼女、アリアの表情は酷く澄んでいる。無表情そのものである。
「なぁ、アリア。お前、もうちょっと喜んだような表情をしろよ」
理論上、感情変化と表情変化の連動動作は可能である。だから賢は苦笑いと共に返答した。
「しかし、マスター。私のメモリには喜びの感情発生時における表情変化のパターンが記録されておりません」
「……あぁ、それもそうか。じゃあ、今の明日香君の表情をインプットしておけ」
びくっ、と賢の隣で微かに驚いた明日香は慌てたように顔を手で覆い隠した。
「鈴沼部長! 気づいていたのなら何か一言下さいよ!」
明日香は指の隙間から照れたように賢を覗き見る。
「はっはっは。いやいや、すまない。君の表情変化は実に面白いのでな。出来ればだがアリアに学ばせてやってくれ」
「嫌です」
即答。
「失礼ながら鈴沼部長、今は起動試験中です。表情筋と感情との連動動作訓練については後日でよろしいかと」
「それもそうか……」
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