第五章

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「あの、重くないですか?」 「これくらい平気ですよ。むしろ僕は円さんがこれを持っていたのが不思議です」 総司さんは綺麗な顔立ちをしてるし腕も細いけど、こういう時に男らしさを感じてしまう。 台所まで運んでもらい、ちゃっかり洗うのも手伝ってもらった。 「すみません。手伝わせちゃって」 「巡察が終わって暇だったので。それより、これは何に使ったんですか?」 「稽古してる皆さんに差し入れしたんです。水分補給のためにお茶を淹れて、道場まで持って行ったんですよ~」 「あんなむさ苦しいところに行ったんですか。ご苦労様です」 湯呑みを戸棚に片して、漸く一息つくことができた。 ふうっと息を吐くと、後ろからくいっと引っ張られる。 振り向くと、おでこにキスをされた。 「隙あり」 「なっ! 何するんですか!?」 「そんなに無防備だから山野君にバレちゃうんですよ」 「確かにそうですけど! それとこれは関係ないじゃないですか!」 「あっ、照れてるんですね」 むぅ……からかわれてる。 ぷいっと総司さんから顔を背けて、今日の晩御飯に取りかかる。 「拗ねちゃいました?」 「……拗ねてませんっ」 「感情隠すの下手ですね。これ以上からかうと怒りそうですし、続きは夜にしますね」 逃げるように、総司さんは出ていってしまった。
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