序章

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えっ? ここどこ!? 近くで映画の撮影でもしてたっけ!? 大学入試の帰り道。 普段あまり行かないようなところに来たから、年甲斐もなく冒険みたいなことをしていたらこの有様。 すっかり道に迷ってしまった。 「携帯は圏外だし……このままじゃ行き倒れ!?」 それだけは絶対に嫌だ。 大学入試の帰りに迷子になって死んだなんて、恥ずかしすぎる。 映画の撮影の邪魔になるかもしれない。 だけど意を決して、近くにいた着物の女性に声をかけてみた。 「あのー、撮影中?すみません。ここってどこですか?」 「さ、撮影? 何の話?」 ジロジロと女性は私の頭からつま先までを見る。 紺のブレザーに白のワイシャツ。 それにカーディガンとマフラーと茶色いローファー。 いたっておかしなところは何もない。 やっぱり撮影だから世界観? 私みたいな服装は知らないってことかな? 「……あんた、異人かなにか? 随分うまく喋るようだけど。悪いことは言わへんから、早よ立ち去った方が身の為よ」 女性はそれだけ言うと、さっさといなくなってしまった。
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