第三章

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「先にあの曲がり角までついた方が勝ちだ」 「わかった! 負けないよ!」 毎日ここの廊下を掃除してるのは私なんだからね! 慣れてるんだから! 斎藤さんの隣に雑巾を置いて私も構える。 「いくぞ?」 「いつでもどうぞ」 「用意……始め!」 斎藤さんの合図で一気に廊下を駆け抜ける。 キュッキュッと廊下を滑る音。 隣に並ぶ斎藤さん。 負けられない! 「私は雑巾がけで一番になる!!」 僅かに私の身体が前に出る。 曲がり角まであと数メートル。このままいけば私の勝ちだろう。 いける! 勝てる! 斎藤さんに勝つんだ! そう思った矢先だった。 「えっ、えぇ!? ちょっとちょっとなんで!?」 「あ?」 曲がり角から土方さんが出てきてしまった。 勢いのついている私は止まらない。 「きゃあああああああ!!」 ドシンッ…… 土方さんは私がそのまま突っ込んでくると思わなかったのか、避けることはしなかった。 「いったぁい……!」 「マル、てめぇ。なんで止まらねぇんだ!」 「だって今勝負の最中……ってああ!!」
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