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「副長。先ほどぶりですね」
全く表情を崩さずにそう言って、斎藤さんが曲がり角の壁にタッチした。
「せっかく勝ってたのに……! 土方さんのせいで負けた……」
「何遊んでんだ! 仕事をしろ仕事を!」
「今は一と掃除をしながら仕事をしてたんですー!」
「「一?」」
ピクリと二人が反応した。
土方さんはニヤニヤとした笑みを浮かべ、斎藤さんは……顔が真っ赤!?
「……やっと名前で呼んでくれたな。俺はその、嬉しいぞ」
まるで恋する女の子のように、ほっぺを赤くして照れる一はなんというか、可愛い。
クールそうに見えるから、照れた顔が余計に可愛く見えてしまうのかもしれない。
「一と話すようになったか」
「副長が信用した相手がどのようなものか見たかったので」
「よ、余計なこと言うんじゃねぇ!!……まあ、仲良くやってるなら安心した」
そう言うと、土方さんは今私達が掃除した廊下を歩いていく。
ぺたりと足跡がつく。
「土方さん!」
「副長!」
「「汚い足で歩かないでください」」
私と一の声がハモった直後、ごちんっという音が辺りに響いたのは言うまでもない。
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