第三章

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「副長。先ほどぶりですね」 全く表情を崩さずにそう言って、斎藤さんが曲がり角の壁にタッチした。 「せっかく勝ってたのに……! 土方さんのせいで負けた……」 「何遊んでんだ! 仕事をしろ仕事を!」 「今は一と掃除をしながら仕事をしてたんですー!」 「「一?」」 ピクリと二人が反応した。 土方さんはニヤニヤとした笑みを浮かべ、斎藤さんは……顔が真っ赤!? 「……やっと名前で呼んでくれたな。俺はその、嬉しいぞ」 まるで恋する女の子のように、ほっぺを赤くして照れる一はなんというか、可愛い。 クールそうに見えるから、照れた顔が余計に可愛く見えてしまうのかもしれない。 「一と話すようになったか」 「副長が信用した相手がどのようなものか見たかったので」 「よ、余計なこと言うんじゃねぇ!!……まあ、仲良くやってるなら安心した」 そう言うと、土方さんは今私達が掃除した廊下を歩いていく。 ぺたりと足跡がつく。 「土方さん!」 「副長!」 「「汚い足で歩かないでください」」 私と一の声がハモった直後、ごちんっという音が辺りに響いたのは言うまでもない。
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