1581人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰だ?」
「一君。僕ですよ僕。総司です」
「総司か……。ならいい。円、すまない。発言には気をつけなければ」
謝る一の言葉もあまり耳に入らない。
総司さんとどう顔を合わせていいかわからないから。
無言で夕飯の支度を続けて総司さんが出ていくのを待つけど、そんな雰囲気は微塵もない。
「一君。円さんと仲良くなったんですね」
「ああ。副長の信用した人なら大丈夫だ。それに、円は話していてとても楽しいからな」
「円……ですか。本当に仲良くなったんですね」
二人の会話が耳に入ってくる。
総司さんの声が聞こえてくると胸が苦しくって。
包丁を扱っているのに、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
「痛っ……」
「円? 大丈夫か!?」
「大丈夫大丈夫! ちょっと指切っちゃっただけだから! 一は続けてていいよ」
一旦洗おうと思って台所を出ようとすると、右手を掴まれる。
「円さん、傷見せてください」
「あっ、これくらいなんてことないですから……」
引き止めたのは総司さん。
目を合わせるのも怖くって俯いてしまう。
すると、総司さんは私の左手を自分のほうへと引き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!