第三章

19/58
前へ
/718ページ
次へ
「誰だ?」 「一君。僕ですよ僕。総司です」 「総司か……。ならいい。円、すまない。発言には気をつけなければ」 謝る一の言葉もあまり耳に入らない。 総司さんとどう顔を合わせていいかわからないから。 無言で夕飯の支度を続けて総司さんが出ていくのを待つけど、そんな雰囲気は微塵もない。 「一君。円さんと仲良くなったんですね」 「ああ。副長の信用した人なら大丈夫だ。それに、円は話していてとても楽しいからな」 「円……ですか。本当に仲良くなったんですね」 二人の会話が耳に入ってくる。 総司さんの声が聞こえてくると胸が苦しくって。 包丁を扱っているのに、ぎゅっと目を瞑ってしまった。 「痛っ……」 「円? 大丈夫か!?」 「大丈夫大丈夫! ちょっと指切っちゃっただけだから! 一は続けてていいよ」 一旦洗おうと思って台所を出ようとすると、右手を掴まれる。 「円さん、傷見せてください」 「あっ、これくらいなんてことないですから……」 引き止めたのは総司さん。 目を合わせるのも怖くって俯いてしまう。 すると、総司さんは私の左手を自分のほうへと引き寄せた。
/718ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1581人が本棚に入れています
本棚に追加