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「なっ……!!」
ズキリと、切ってしまった人差し指が痛む。
だけどそんな小さな痛みが気にならないくらい、総司さんの行動に驚かされていた。
ザラザラとした舌の感触が私の指を這う。
「はい。消毒です」
チュッというリップ音を立てて、総司さんは私の指から口を離した。
かあっと顔が熱くなって、床を見たままあげることが出来ない。
「円さん。僕はあなたを嫌いになりません。あなただけには、こういうことだって出来る。だから避けないでほしいです」
「……そんなのわかりません。私だって女ですよ? 急に嫌になるかもしれません」
「ないです。絶対に」
「も、もう離してください! 私は……夕餉の支度があります」
パッと手を振ると、総司さんの手は簡単に離れる。
総司さんは”すみません”と小さく謝って、台所を出ていった。
「円」
「変な空気にしてごめんね。続けよっか」
一は何か聞きたそうな顔をしてたけど、私は無言のまま夕飯の支度に取り掛かった。
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