第三章

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話はまだ続きそうだというのに、タイミング悪く島原の大門についてしまった。 「続きはまたな。頑張り」 「うん。ありがとう。いってきます」 山崎さんは大門のそばで私のことを見送ってくれる。 旭屋へと急ぎながらちらりと後ろを振り向くと、山崎さんの姿はまだあってなんだか嬉しかった。 「お春さん、こんばんは」 「あらぁ。円ちゃん。待ってたのよ」 旭屋に入るとお春さんが笑顔で迎えてくれる。 お春さんと共に用意された部屋に行くと、一着の着物を渡される。 「今日からお座敷に出てもらいます。大丈夫?」 「はい! 大丈夫だと思います」 この前の二日間は着物の着付けや化粧、お客さんへの対応などを教わった。 いわゆる、研修期間みたいなものだった。 今日からが本番。 島原芸妓の最高位である太夫(だゆう)の次、天神(てんじん)と呼ばれる芸妓と共にお座敷に出るらしい。 「もうそろそろ来ると思うんだけどねぇ」 お春さんがそう言うと、丁度襖が開いて一人の女の子が入ってきた。
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