第三章

26/58
前へ
/718ページ
次へ
お春さんは一通り説明すると出て行く。 葵ちゃんは早速着物を着始めたので、私も着ることにした。 「円ちゃんすごいね。もう着方覚えたの?」 「はい。あってるかわからないんですけど」 「大丈夫大丈夫! 完璧だよ! 覚えるの早いんだね~。てか、敬語なんていらないから!」 幕末に来てわかったことは、自分は適応能力があり、物事の覚えが早いこと。 お陰で最低限のことはわかるようになっていた。 幾重にも重なった着物は少し重い。 加えて、いつもは襟元もきちんとしているのに、少しはだけているものだから落ち着かない。 葵ちゃんを見ると、赤をベースにした着物は明るさを際立てると共に色っぽさも出していて。 クリッとした愛らしい目元には既に紅が引かれている。 「円ちゃんもお化粧しよっか! あっ、私がやってもいい?」 「は……うん! 是非お願いします!」 「あはは! また敬語! 今日は控えめにしとこうか。最初から変な人に好かれたら困るからね!」 葵ちゃんは慣れた手付きで、私の顔に白粉を塗り始めた。
/718ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1581人が本棚に入れています
本棚に追加