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着付けも化粧も終え、髪も綺麗に結ってもらって準備は出来た。
あとは座敷に出るのみ。
「まだ時間あるからそんな緊張した顔しないで平気だよ!」
「私緊張した顔してる?」
「うん。こーんなしかめっ面してるよ」
眉間に皺を寄せて私の顔真似をする葵ちゃん。
綺麗に化粧もしてあるその顔でやられると、おかしくて笑いがこみ上げてくる。
「あはは! 葵ちゃん、そんな綺麗な顔で変な顔しないでよ~!」
「よしよし! 良い笑顔だね! やっと笑った!」
『やっと笑ってくれましたね』
ふと、総司さんの言葉を思い出した。
不安でいっぱいだったあの時、総司さんのお陰で少しだけど気を紛らわすことが出来た。
頭を撫でてくれたりして、本当に安心した。
「円ちゃんどうしたの? 急にそんな寂しそうな顔して」
「えっ、あっ……なんでもないよ」
「嘘。私達はね、お客さんの顔を見て仕事をしてる。些細な変化にも気付けるようにね。だからわかる。今、円ちゃんが悲しい気持ちを抱えてるって」
見透かされてしまっていて、何も言うことが出来ない。
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