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「円ちゃんはなんでここで働こうと思ったの?」
「葵ちゃん、円ちゃん。お客様いらっしゃったわ」
答えようとしたところでまたしてもお春さんに遮られる。
葵ちゃんはふうっとため息をつくと”仕方ないね”と笑って立ち上がる。
「続きは今日の仕事が終わってから。さっ、頑張ろ!」
「うん! よろしくね!」
部屋を出てお客さんのいる座敷へと向かう。
今日のお客さんは初めて来た人だと、お春さんに言われた。
「円ちゃん。自分のお客さんになってもらう良い機会だよ。頑張って!」
座敷に入る直前小さな声で囁かれて、尚更頑張らなければと思った。
スッと襖を開ければそこには二人の男の人。
「おう! やっと来たか!」
首あたりまでの長さの無造作な黒髪に、少しつり目だけれど整った顔の男の人。
「女が来た途端うるさいよ」
長い黒髪に目つきの悪い目をしているけれど、息を飲むほど綺麗な顔をした男の人。
そんな二人が向かい合って座っていた。
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