第三章

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「円ちゃんはなんでここで働こうと思ったの?」 「葵ちゃん、円ちゃん。お客様いらっしゃったわ」 答えようとしたところでまたしてもお春さんに遮られる。 葵ちゃんはふうっとため息をつくと”仕方ないね”と笑って立ち上がる。 「続きは今日の仕事が終わってから。さっ、頑張ろ!」 「うん! よろしくね!」 部屋を出てお客さんのいる座敷へと向かう。 今日のお客さんは初めて来た人だと、お春さんに言われた。 「円ちゃん。自分のお客さんになってもらう良い機会だよ。頑張って!」 座敷に入る直前小さな声で囁かれて、尚更頑張らなければと思った。 スッと襖を開ければそこには二人の男の人。 「おう! やっと来たか!」 首あたりまでの長さの無造作な黒髪に、少しつり目だけれど整った顔の男の人。 「女が来た途端うるさいよ」 長い黒髪に目つきの悪い目をしているけれど、息を飲むほど綺麗な顔をした男の人。 そんな二人が向かい合って座っていた。
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