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「葵です。よろしくお願いします」
「ま、円です。よろしくお願いします」
緊張して少し声が震えてしまう。
そんな私の様子を見て、つり目の男の人が笑った。
「あはは! お前もしかして芸妓になったばっかか?」
「はい。今日が初めてです」
正直に答えると、もう一人の男の人の眉がピクリと動く。
「君、なんか出来んの?」
「何かって……?」
「舞とか歌とか。何も出来ないわけじゃないよね?」
不穏な空気が流れる。
葵ちゃんもそれを感じ取ったのか、空気を変えるように口を開く。
「円ちゃんはまだ何も出来ません。代わりに私が……」
「君には聞いてない。どうなの? 出来るの? 出来ないの?」
「おいおい稔麿(としまろ)……。まだなりたてって言ってんだからよ」
どうしよう。私に何か出来ることって言われても……。
「わ、私は……」
諦めて何も出来ないと言おうとした時、ある一つのものが目に入る。
それを指差して、稔麿と呼ばれた彼を真っ直ぐに見つめた。
「あれなら……出来ます」
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