第十六章

21/29
1508人が本棚に入れています
本棚に追加
/685ページ
閉め切られた襖の外から声を掛け、ゆっくりと開ければ姉上は既に座って待っていた。 机を挟んで姉上と向かい合うように座れば、円さんも小さな声で"失礼します"と言って、腰をおろす。 「まずは遠い所からお疲れ様。無事に帰ってきてなによりだわ」 「ありがとうございます。義兄さんは?」 「今日は少し遅いの。でも貴方の帰りを楽しみにしてたわよ」 僕の義理の兄にあたる林太郎義兄さんは、沖田家を継がせる為に婿養子でうちに来た。 まだ僕が幼い頃に来たものだから、ある意味本当の兄のように慕っている人でもある。 会話が途切れて沈黙が訪れた。 「姉上。紹介させてください。僕の恋仲の速水円さんです」 正直、かなり緊張している。こんな事初めてだし、想像もしていなかった。 「速水円です。総司さんとお付き合いさせていただいています」 モジモジとしながら頭を下げて挨拶をすると、姉上の視線はジッと円さんに注がれる。 円さんを安心させてあげたくて手をそっと重ねると、その手は震えていて。 ぎゅっと握れば少しだけ震えは収まった。 「京へ行って少ししてから出会ったんです。その時からずっと、どんな時も傍で僕を支えてくれています」 口を開かない姉上に対して、不安な気持ちが募っていく。
/685ページ

最初のコメントを投稿しよう!