1.カツラとメガネ

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「さっちゃーんwww片付けたら食堂行くべーwwww」 「あ、うん!」 一瞬感じた孤独を自分の中から揉み消すように声を張る。 本当に、もう戻れないのだ。 こうして環境が少しずつ出来上がっていくのを見ていると、もう戻れないんだと思い知らされて…もう戻ってこないものだと、思い知らされてしまう。 「…やっぱり、また今度にする。巧くん、どうする?」 段ボールを部屋の隅に押しやって巧くんに問いかける。 「んーwwじゃあ早いし、寮内を案内してあげようwww」 「やった。ここ広いし、迷子になりそうだよねー」 「うんww実際ここしばらく1年の俺らは迷子になりっぱなしよwww」 「ああ、そっか。巧くんも一年生だもんね。」 忘れてた…ずっとここにいたものだと…。 「まあ、中高一貫だしなwwwみんなはずっといるようなもんよwww」 「巧君も中学からここなの??」 「俺は外部受験生っすwwww」 でもここって確か、エリート校だよね…。頭いいんだなー。 寮室を出てさっき来たのとは逆の方向へ向かって歩く。 巧くんは僕より歩くのがちょっとだけ速い。いや、だいぶ速い…! 「さっちゃんwwwおそいww」 「巧くんが速いんでしょ!?」 ま、まって、息が上がる…。 「早歩きやめて走ればいいじゃんっwwww」 「負けた気がする…!」 意地でも走るか…! スピードアップしてみる。ちょっとずつ距離が縮まる。 「もうちょっと―――!……!?」 次の瞬間、突然巧くんが足を止めたため勢いよく激突。 は、鼻が…。 「いてて…大丈夫?ごめんね、巧くん。」 「いーやwwwさっちゃんこそ大丈夫かー?ww鼻ぶつけた?wwwww」 「…うん。」 「そんでもってメガネ落としたぞ?www」 巧くんはそう言って手に持った僕のメガネを「装☆着!!!」と勢いよくつける。 「あ、メガネ!」 「―――…」 「ん、返すwww」 コンマ単位の空白に肝を冷した。 「ありがと。」 (伊達メガネだって、ばれたらどうすればいいのかな。) 不意にそんなことが脳裏をよぎった。 なんだかはっきりしない意識のまま、巧くんの友達の部屋に入った。
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