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「さっちゃーんwww片付けたら食堂行くべーwwww」
「あ、うん!」
一瞬感じた孤独を自分の中から揉み消すように声を張る。
本当に、もう戻れないのだ。
こうして環境が少しずつ出来上がっていくのを見ていると、もう戻れないんだと思い知らされて…もう戻ってこないものだと、思い知らされてしまう。
「…やっぱり、また今度にする。巧くん、どうする?」
段ボールを部屋の隅に押しやって巧くんに問いかける。
「んーwwじゃあ早いし、寮内を案内してあげようwww」
「やった。ここ広いし、迷子になりそうだよねー」
「うんww実際ここしばらく1年の俺らは迷子になりっぱなしよwww」
「ああ、そっか。巧くんも一年生だもんね。」
忘れてた…ずっとここにいたものだと…。
「まあ、中高一貫だしなwwwみんなはずっといるようなもんよwww」
「巧君も中学からここなの??」
「俺は外部受験生っすwwww」
でもここって確か、エリート校だよね…。頭いいんだなー。
寮室を出てさっき来たのとは逆の方向へ向かって歩く。
巧くんは僕より歩くのがちょっとだけ速い。いや、だいぶ速い…!
「さっちゃんwwwおそいww」
「巧くんが速いんでしょ!?」
ま、まって、息が上がる…。
「早歩きやめて走ればいいじゃんっwwww」
「負けた気がする…!」
意地でも走るか…!
スピードアップしてみる。ちょっとずつ距離が縮まる。
「もうちょっと―――!……!?」
次の瞬間、突然巧くんが足を止めたため勢いよく激突。
は、鼻が…。
「いてて…大丈夫?ごめんね、巧くん。」
「いーやwwwさっちゃんこそ大丈夫かー?ww鼻ぶつけた?wwwww」
「…うん。」
「そんでもってメガネ落としたぞ?www」
巧くんはそう言って手に持った僕のメガネを「装☆着!!!」と勢いよくつける。
「あ、メガネ!」
「―――…」
「ん、返すwww」
コンマ単位の空白に肝を冷した。
「ありがと。」
(伊達メガネだって、ばれたらどうすればいいのかな。)
不意にそんなことが脳裏をよぎった。
なんだかはっきりしない意識のまま、巧くんの友達の部屋に入った。
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