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校舎の中も外見に劣らず城っぽかった。
校舎内に入ったその足で理事長室…つまり叔父さんのいるところへ向かう。
意外にも近くにあったその部屋のドアを鬼柳さんが叩き、「どうぞ」と最近電話ごしに聞いた声が答えた。
「失礼します。」
中は整然としていて書斎らしく茶色などの古めいた家具が並べられている。
「お久しぶりです。」
「よく来たね、皐月。」
叔父―――三角 隆一郎は家に遊びに行った時のように僕を迎え入れた。そういう対応をされると学校だってことを忘れそうだからやめてほしい。
「あれから守二(しゅうじ)は連絡をとってきたかい?」
「いえ…」
僕がそう答えると小さく舌打ちが聞こえた。怖い。
鬼柳さんが戸惑っているのがわかる。
「叔父さん」
「ああ、わかっている。この件については追々話し合おう。鬼柳君。」
表情を表に出さずに「はい。」と答えた。
「彼を1年S組に送ってあげなさい。」
「わかりました。」
そう言うと僕に目配せし、早々と理事長室を後にする。僕も軽く頭を下げた後部屋から出た。
「き、鬼柳さんS組って?」
早歩きの彼を追いつつ問う。
すると「そのうちわかりますよ。」とはぐらかされてしまう。きっと面倒くさい説明がそのうちあるんだろうな…と思い、疑問を胸にしまった。
「着きました。ここがS組です。」
いたって他の教室とは変わりない…ともいえない。
ここに来るまでに見てきた教室より一回り大きく、扉も頑丈そう。
今度は少し乱暴にドアをノックし、「泉先生ー」と名前を呼んだ。
数秒後、これまた乱暴に扉が開き若い男が出てきた。
「先生、転校生です。」
「あ゛?聞いてねーぞ」
「貴方が聞き漏らしただけですよ。」
こ、怖い怖い。
どうやら先生らしいその人はシャツが若干はだけており、耳にはピアスと…教師とは思いずらい風貌で、しかも目つきが悪い。
僕の視線に気づいたのかこちらを向くと「泉 佑一(いずみ ゆういち)。今日からお前の担任だ。」と軽い自己紹介。
「取りあえず中に入れ。自己紹介はそれからだ。鬼柳、戻っていいぞ。」
「…礼とかないんですか?」
「チッ…ありがとな。戻れ。」
この二人、仲悪いのだろうか。
鬼柳さんは不機嫌そうな顔で泉先生を睨んだ後僕に軽くお辞儀をして戻っていった。
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