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「あ、あの…」
「自己紹介は中に入ってからだ。」
そう言って強引に腕をつかみ、教室に入っていく先生。
てか腕痛い。力強いよ、加減しろ!
教室の中には少なめの生徒に対してたくさんの机が並べられている。
「転校生だー。仲良くしろよ。…ほら、自己紹介。」
と全部こっちに振ってきた。チョークを渡されて、名前を書けって言われてる事の気づいた。無茶振りだな…。
「た、辰野皐月です。えっと…よろしくお願いします。」
何か言うべきだったのかな!?
「ということだー。念を押すが、仲良くしろよ。」
適当に取りまとめてくれた先生は「じゃあ適当なとこ座っとけ」といって窓際を指差す。
適当に座っとけはなんだったんだろ…。
まあいいや。取りあえず一番後ろに座ろう。
「おっと、足がすべったぁ」
「うぉお!?」
いきなり出された足をよけられずそのままこける。
地味に痛い…。あとなんか視界がクリアに…あ、メガネ!!
「め、メガネ…」
どうしよう、変装グッズが←
無い?なんで??
「あの、コレ?」
「え?」
差し出されたのは確かに僕のメガネだ。
思わず顔を上げて「ありがとうございます!」と言った。
お礼を言うのは大事だよ?
さっとメガネを受け取って窓際の一番後ろへ。さっき顔を上げた時に顔を見られたかもしれないとかちょっと不安に思いながら。
*
HRが終わって、教科書類を何も持っていない僕は各教科ごとの先生に挨拶だけして授業中はずっと座ってるだけっていうのを繰り返してた。
「次は…美術か。」
移動教室なのかな?まあ、誰かに適当についていけばいいか。
美術室は長い廊下の一番奥で、どこの学校の美術室ともあまり変わらない感じだった。隣の準備室が異常に広いのを置いておけば、だけど。
「転入生の辰野です。」
とまあ、半ばお決まりの自己紹介を済ませる。
「おおー。話は聞いてるよ。美術担当の平塚大祐(ひらつか だいすけ)だ。デッサンのときとかは俺とペアだからそのつもりで。」
「あ、はい。」
顔をじっと見られたりする授業だからって叔父さんがこうしたらしいんだけど、逆に目立つんじゃないかな…??
「それにしても…本当に色白だし、綺麗だね。今度個人的にモデルになってもらいたいくらいだ。」
「えぇ!?」
「ハハ、冗談だって。でも気が向いたら声をかけてねー」
平塚先生は背を向けて準備室に入っていってしまった。
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