空虚 その2

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テレビが情報を送りこんでくる。 最近は、 でき婚と呼ばず、 授かり婚と呼ぶのだともっともらしく連呼している。 新しい呼び方、 物は言いようってやつだ。 次々に名付けられ、 次々に忘れ去られる呼び名。 呼び名の墓場には膨大な数の名称が眠っているに違いない。 「彼女の犬、 妊娠しないといいね」 私がぼそっとつぶやく。 兄がものすごい顔をして睨みつけてきた。 「さてと、 お父さん帰ってこないけど、 先に食べましょう」 父の帰宅よりも先に食べるのはいつものこと。 これもいつもと変わらない風景。 「いただきまぁーす」 母は、 やけにうれしそう。 御馳走だと言っていたテーブルには、 大量の唐揚げとポテトサラダ、 そしてお刺身。 なんだか組み合わせがよくわからない。 もちろん私が食べる分だけ、 目の前の紙皿に鎮座している。
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