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旦那が帰ってしばらくして、隣の病室から大勢の人の啜り泣きが聞こえてきた。
私は、そっと隣室を覗いてみた。
百三歳のお婆ちゃんが亡くなった直後だった。
肉体から解き放たれた、お婆ちゃんの霊が、親族の涙に、幸せそうな微笑みを浮かべていた。
「見事な大往生だな」
不意に私の隣に現れた男が、私に語りかけてきた。
このような姿になって、わかった事だが、病院には沢山の霊が存在しており、今の私を霊的な存在と仮定すると、病院にいる霊的存在は、概ね三タイプに区別する事が出来た。
先ずは、私のように生死のはざまに居る者。
次いで、大多数を占める死者の霊。
そしてたまに見かける、異質なる存在……
異質なる存在は、ある者は神々しいまでの光のオーラを身に纏い、ある者は禍々しい闇を撒き散らして周囲を震撼させた。
天使と死神。
それが異質なる存在に対する私の予想だった。
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