第一章:In diebus aestatis 

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「あの、旅行に連れて行ってくれるというのは……?」  わけがわからないため、少女に質問する。旅行の話をしていたはずなのに手品を披露されているのだ。  むしろ、これで理解が追い付く人がいたら見てみたい。 「え、これから旅行先に送るんだよ?」  少女はきょとんとしている。   「いや、これ手品だよね? 僕たちは旅行の話をしていたよね?」 「そうだよ? だから、これから旅行先に送るの」  だめだ、会話が成り立っていない。  やはり関わるべきじゃなかった。 「それよりお兄さん、頭痛とかしないよね? それか、変な声が聞こえるとかもないよね?」 「しないし、聞こえるのは君と蝉の声だけだけど」  君の行動の意味不明さに、頭痛はするが。 「よかった。じゃあ問題ないみたいだね」 「いや、大ありだよね?」  そう言って、この模様の範囲から出ようとする。  が、でられない。 「え?」  模様を構成する一番外側の円、その外に出ることができない。まるでそこに壁があるかのように、何かに阻まれる。 「なんだこれ、どうなってるんだ?」  これも手品だとしたら、いったいどのような種なのか――。 「準備OK、適性OK、よし、じゃあ送るよ? スリー、ツー、ワン――」  ゼロ。  その瞬間、目の前が真っ白になった。  しっかりと立っていたはずの地面の感覚が消える。  あれほどうるさかった蝉時雨の音が消える。  そのことに混乱する間もなく、私は意識を失った。
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